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犬のフィラリア症について
今回は早期に発見され、フィラリアが心臓の弁へ絡みついたものの摘出手術の実施により一命を取り留めた症例を紹介します。
フィラリア症は「Dirofilaria immitis」という寄生虫の感染によって起こる症状を指します。このimmitisという名前は「残酷な」という意味があり、その名の通りわんちゃん達にとってとても残酷な症状を出します。その症状とは心臓病の症状です。
まず寄生虫は蚊によって媒介され、最初は犬の皮膚の下で大きくなります。そして幼虫が十分大きくなると(感染から2〜3ヶ月後くらい)心臓の中へ寄生し始めます。心臓内の肺動脈に寄生したフィラリアは7年程は心臓に住み続けるのですが、その間に心臓の弁へ絡みついたりすると急激に心不全症状(大静脈症候群)を出し、大量の腹水が貯まるようになり酷い咳の症状が出現します。その後血尿が出現し、最終的には死亡します。
フィラリア症で手術を行った症例
この症例は10歳のチワワの男の子で、症状はなく歯石の付着を理由に来院しました。身体検査で心臓から異常な音が聞こえて検査を行ったところ、血液検査でフィラリアの陽性とミクロフィラリアという幼虫が血液中にいることが分かりました。
症状はなかったため、内科での治療を考えたのですが超音波検査を実施したところ心臓の弁にフィラリアの成虫が絡みついていることが分かりました。
枠の中に見える「=」のように見えるのがフィラリアの体です。三尖弁という弁に絡んでいます。
よって、この後に大静脈症候群(上記した危険な状態)という非常に危険な状況になる可能性が高かったため、フィラリアの虫を心臓から釣り出す手術を行いました。
首の血管から、写真のフィラリアのつり出し用の器具を挿入し、そして超音波やX線で心臓内部を確認しながら、無事フィラリアの虫をつり出しました。下の写真がフィラリアの成虫になります。
見ての通りとても長い寄生虫です。これが心臓の弁に絡みついたら酷い症状となるのも頷けます。特に今回は小型犬での寄生のため、この1匹でも重症化する可能性が高かったと考えられます。以降本人も調子はよく現在も元気にしております。
今回は一命を取り留めましたが、死亡する可能性もある病気です。しかも薬で予防可能です。
毎年、東京都内にもかかわらず、当院ではフィラリアの検査で陽性(寄生有り)と診断されるわんちゃんが1〜2頭来院します。中には死亡する症例もいます。皆様フィラリアの予防はくれぐれも軽く考えず、決められた日にち予防しましょう。そして万が一、フィラリアの検査で陽性と診断されたら直ちに来院ください。
中野区 中野 フィラリア 心臓 循環器 もみじ山通りペットクリニック
執筆担当:
獣医師 井口和人