東京都中野区で評判の動物病院【もみじ山通りペットクリニック】(年中無休・予約優先制)

ここでは特徴的な症例について、一部をご紹介いたします。
※手術の写真を掲載しておりますので、苦手な方はご注意ください。
小滝橋動物病院グループ全体の外科症例件数については、>こちらをご参照ください。

目次


猫の特発性膀胱炎について


ネコちゃんは膀胱炎、尿管・膀胱結石といったおしっこトラブルを抱えることが多く、
これを総称して猫下部尿路疾患(FLUTD)と呼ばれています。
今回は猫下部尿路疾患のひとつである「特発性膀胱炎(FIC)」についてお話しします。
特発性膀胱炎とは、結石や細菌感染が認められない、
原因不明の下部尿路の症状(頻尿、血尿、排尿痛など)を表す病名です。
ネコの下部尿路疾患の60%を占めると言われており、再発を繰り返すことが多い疾患です。



特発性膀胱炎の原因


原因は不明ですが、発症要因は知られており、
ストレスに対する防御反応が弱いこと、膀胱粘膜の異常といったことが大きく関わっていると言われています。
神経質、怖がり、他人が苦手な性格だったり、水分摂取量が少なく尿が濃いといったことが発症要因となります。



特発性膀胱炎の治療


FICは抗生剤や止血剤といった薬は効果がなく、
すぐ治る疾患ではありません。
根治が難しいため、発症時の症状を緩和すること、再発期間を延長させることが目標です。
1. ストレス要因を特定し、除去する
2. 飲水量をしっかり確保する
3. 生活環境の改善
この他にも排尿痛に対して鎮痛剤を一時的に用いることもあります。



実際の特発性膀胱炎の症例


雑種ネコ, 3歳4ヶ月, 避妊雌でした。
昨晩から血尿が認められ、トイレ以外の場所でも排尿してしまい、
先ほどから排尿姿勢をとっても尿が出ないことを主訴に来院しました。
尿検査では赤血球が認められました。細菌や結晶は認められませんでした。
画像検査を行ったところ、
結石は認められず、尿管や尿道に閉塞は認められませんでした。
飼い主さんに詳しくお話しを伺ったところ、
家の外で昨日から工事が行われており、いつもと違う騒音に怯えていたとのことでした。
各種検査で結石や細菌感染が認められず、尿中に赤血球のみ認められたこと、
環境の変化といったお話があったため本症例はFICと診断しました。
治療は、鎮痛剤の注射を行い家では鎮痛剤を内服していただくこととしました。
水分摂取量を多くしていただくため、水飲み場を増やしてもらう、
ネコ は流れる水を好む性質があるためウォーターファウンテンを設置してもらう、
普段の食事の半分をウエットフードにしてもらうようにしました。
症例は翌日以降、排尿痛は認められなくなり
工事が終わると血尿も完全におさまったとのことでした。
FICは再発が多い疾患であるため、飲水量を増やす工夫は引き続き継続してもらっています。
ここでご紹介したFICの症例はほんの一例に過ぎません。
FICは症状も治療法も症例ごとに異なるため、飼い主さんからの情報が診断・治療に有用です。
FICは完治することは難しいため、ネコ ちゃんが快適に安心して暮らせるように環境改善に努め、
症状とうまく付き合って行くことが大切です。


執筆担当:獣医師 坪松若奈